FAQ進水式でのよくある質問

四国ドックの進水式を見学した子供からこんな質問がきました。

波や風で転覆しないの? ---- 船の復原力の原理 ----

どうして船は、波・風に揺られても転覆しないの?

まず船の3大特性として(1)水上に浮く(2)水上を走る(3)波浪中でも転覆しないという特徴が挙げられます。
ここでは(3)波浪中でも転覆しない=船の復原力の原理について説明します。先ず始めに、起き上がり小法師の七転び八起きがなぜ倒れないのか考えてみましょう。

作用、反作用の法則
机の上に重さWの物体を置くと机は物体からWの力を受け、また物体は机から反力Nを受けます。この反力Nは物体の重さWに等しく、向きが反対で物体が釣合って静止しているとき、その作用線は同じ直線上にあります。

復原力の原理
起き上がり小法師の底面にはおもりを入れており、いくら傾けても元に戻る仕組みになっています。始めAという状態で静止している起き上がり小法師を手で押してBの状態まで傾けてから手を離すと左右に振れた後Aの状態に戻り静止します。
これは机上の点Pを支点にして、おもりの重力Wという力によって物体を図の左周りに回転させるからです。
机上の点Pには、作用・反作用の法則によって抗力Nが働いており、この大きさはWに等しく、力の向きが反対になります。
物体を回転させる力の大きさはW*Lと表し、これを偶力と呼んでいます。物体の傾きが大きくなるほどLが大きくなるので、元に戻る力が大きくなります。

船の復原力の原理も起き上がり小法師と全く同じ理屈で説明できます。

船の浮心と重心
船には水圧による浮力が働いて水に浮いています。 この浮力は船体の没水部の至る所に働いていますが、その浮力の中心は船体没水部容積の中心になります。これを浮心と呼び、Bという記号で表します。 また船の重さの中心を重心と呼び、記号Gで表します。 船が水に浮いて静止しているとき、船の重力Wと浮力Bは大きさが等しく、向きが反対になっています。作用・反作用の法則です。

復原力
船が風や波によって傾斜すると没水部の容積中心、即ち浮心Bが図に示すように移動します。重心の位置は変わりません。 このとき起き上がり小法師の場合と同様に、大きさが等しく、向きが反対の重力と浮力によって船体を図において左回りに回転させる偶力が働きます。これを復原力と呼び、その大きさはW*Lとなります。 図で分かるように、重心位置Gが低いほどL(復原ていと言います)が、大きくなるので元に戻る力W*Lは大きくなります。

メタセンターについて
船が傾斜すると没水部の浮力中心が移動することは前述のとおりです。船が水面0の状態で直立しているときの浮心をB0とします。水面1のように船が傾くと浮心はB1へ移動します。水面2のときの浮心はB2となります。(水面1、2が水平になるように図を動かして船が傾斜している状態を考えて下さい)

この浮力の鉛直線と船体中心線が交わる点をMとします。船の傾斜角度が小さいときはこの浮力線は同じM点を通ります。この点Mをメタセンターと呼んでいます。即ち船はこのメタセンターMを中心にして振り子のように回転しながら揺れているということになります。

船の重心がメタセンターより高い位置にあると復原力はマイナスとなり、船は転覆してしまいます。 メタセンターの高さは水没部の船体形状によって決定されます。重心高さは船体重量に加えて、積荷などの重量を含む全重量の重心位置です。デッキなど船の高い位置に荷物をたくさん積むと重心が高くなり、復原力が小さくなりますので注意が必要です。