船主が新しく船を建造する場合、造船所に対して見積りを依頼します。これを引き合いと呼んでいます。引き合い時には船主殿より以下のような条件が提示されます。
船主殿から提示された条件をもとに設計者により船の主要目を検討します。これが基本計画です。基本計画では次のような要目や仕様を決定します。
これらから仕様書を作成し、それに基づいて船価の見積りを行います。
契約ネゴで仕様と船価が合意されたらいよいよ契約です。
契約は上記の仕様書や図面を付帯書類とする、造船契約書を取り交わします。
造船契約書には、船価、納期、支払い条件、保証事項などの合意内容や建造中の手続きなどが記載されています。
基本設計とは、契約仕様書にもとづいて船を建造するための基本的な図面等を作成することです。具体的には次のような作業が行われます。
設計部ではこうした図面作成のほかに、資機材の注文書作成、機器メーカーとの折衝や図面の承認作業などを工程に従って処理していきます。
入荷した鋼材を切断し、曲げる工程です。
ブロック組立は主に次の3段階で行われます。
ブロックを船台に順次搭載し、組み立てていきます。
一般に船の後部(船尾部)ブロック(機関室部分)を先に搭載し、順次船首部へつなげていきます。
ブロックを搭載したら前後、上下、左右方向の位置を計測し、ブロック位置、姿勢を固めます。その後、仮付けと呼ばれる部分的な溶接が行われます。
これで溶接継ぎ手部の合わせを行います。仮付けが済んだら本付け溶接を行なっていきます。
造船所における最も華やかなイベントが進水式です。
船主を始め、多くの関係者が参列して盛大に式典が行なわれます。地域関係者や小中学生など一般客も多数見学に訪れます。
船台で組立てられる船体は通常、盤木と呼ばれる多数の固定台に支えられていますが、進水が近づくと徐々に取り外され、進水式では最終的にストッパーの役目をするトリガーによって船体が滑り出すのを止められています。 そして、支綱(しこう)<トリガーの解除装置に連結されている綱>を切断することによってトリガーが外れて船体が滑りだすという仕組みになっています。
進水式で船が海上へ滑り降りてゆく様子は、山が動いているような重量感があり壮大且つ厳粛で新たな命が息吹く感動を覚えます。 船が初めて海上に浮かぶこの瞬間は船の誕生として祝い、命名もこのときに行われるのが一般的です。 建造に携わった多くの関係者が何度経験しても感激する瞬間でもあります。
進水が終わると、船は岸壁につながれ、岸壁にて艤装工事が行なわれます。
船内の装置の組み込みや船室作業をします。
配管工事、配線、結線工事などの他、居住区の内装工事、塗装仕上げ工事、機器の調整、試験などを行なって船の艤装を完成させます。
艤装が終わると船の性能を確認するために海上試運転を行ないます。スピードの計測、主機関の性能、操舵機能、など船主、船級協会立会いのもとで各種試験が実施されます。 船を実際に走らせるため、ほとんどの機器を運転し、その状態を確認することができます。引渡し前の総合確認試験として、造船所各担当者、船主、船級協会、機器メーカーの技術員など多くの関係者が乗船します 。
海上試運転が終わったら最後の仕上げを行ないます。
また海上試運転の前後から本船の乗組員も常駐し、機器の配置や操作要領などを理解するために勉強しています。
乗組員の経験に基づく要望事項などが出されることもあり、造船所はできるだけそうした要望にも応えて、船を完成させます。
船主さんから「良い船ができたね、ありがとう」という言葉をいただくことが建造に関わった従業員の何よりの喜びです。
いよいよ出航です。船の無事な航海を祈って見送ります。